最初に
保育士試験の教育原理の分野では、様々な教育を提唱した歴史上の人物が、毎回、1~2問、多いときで4問程度出題されています。
教育原理では、10題しか問いがないため、人物問題は押さえておきたいところです。
個人的には、教育原理の様々な人物が唱えた教育思想は、1番興味深い分野だと感じます。
ここでは、過去問題で出題された人物を中心に重要なキーワードを箇条書きにしていますが、是非一度書籍等に目を通すことをお勧めします。
独断と偏見で人物のイメージを記憶に残り易いようなイラストにしたよ
イラストについては、今後順次増やす予定です。
ペスタロッチ
令和3年前期、令和元年後期、平成30年後期、平成29年後期、平成28年前期の教育原理、平成31年、平成30年の神奈川県の教育原理で出題されています。
・スイスに生まれ、近代教育に重要な影響を与えた教育思想家・教育者。
・ノイホーフに貧民学校を作った。
・女子学校、聾唖学校を設立した。
・「直観教授」は、感覚に訴え、学習の促進を図る教授方法(「メトーデ」)。
・教育の基礎を子どもの直観におき、直観を構成する要素である「数」「形」「語」といった三要素に着目した教授法。
・直観教授は、知的教育・身体的教育・道徳教育の根本力が養われる。
・「生活が陶冶する」(生活が人間を育てる)という名言がある。
・代表作は、「シュタンツ便り」「隠者の夕暮れ」「ゲルトルート児童教育法」「白鳥の歌」等。
・ペスタロッチは、ルソーの「自然に帰れ」という思想に共感を持つ。
・実物主義の考えを持つ。
・家庭教育を重視。
・頭、心、手の能力を調和して発展させることが教育の目標や課題(精神力、心情力、技術力)。
・教員養成のための学園を開き、フレーベルも学んだ。
・フレーベル、ヘルベルト、倉橋惣三がペスタロッチの影響を受けた。
・知識の詰め込みではなく、子どもの自発性を尊重して、能力を開発していこうとする(「開発教授」)。
「シュタンツ便り」
・自身がシュタンツ(スイス)に孤児院(イベルド孤児院)を開き、学長として道徳教育を実践。
・内戦で家を失った子供たちの世話も引き受けた。
「隠者の夕暮れ」
・王も住まない者も同じ人間であり、平等。
・著書「隠者の夕暮」で、教育の場として家庭を重視した。
・玉座の上にあっても木の葉の屋根の蔭に住まっても同じ人間。
「ゲルトルート児童教育法」
・「人間教育」思想。
・人間教育とは、知的教育や身体的教育である技術的教育を経て、心情的教育である道徳教育を以て完成される。
「白鳥の歌」
・3つの教育の根本力である、「心情的根本力」「精神的根本力」「身体的根本力」が心臓、頭、手に相当し、これらの教育が「人間教育」に通じる。
・人間教育は、知的教育や身体的教育を経て、「道徳教育」によって完成される。
デューイ
令和4年前期、平成30年前期、平成29年後期、平成28年前期、令和5年神奈川県の教育原理で出題されました。
・シカゴに付属の実験学校を創設。
・経験主義の教育を提唱。
・問題解決学習(自ら問題を発見し解決していく能力を身につける)を提唱。
・プログマティズム(経験から知識は生まれる)。
・主著は、「学校と社会」「民主主義と教育」等。
・知識を生かして経験を発展させる教育を重視。
・教育は経験の再構成であると考えた。
・機能主義心理学
・進歩主義教育(子供の興味関心に沿って編成された教育)を重視。
「学校と社会」
・旧教育は、これを要約すれば、重力の中心が子どもたち以外にあるという一言につきる。
・われわれの教育に到来しつつある変革は、重力の中心の移動である。
・コペルニクスによって天体の中心が地球から太陽に移されたときと同様の変革であり革命である。
・このたびは子どもが太陽となり、その周囲を教育の諸々のいとなみが回転する。
・子どもが中心であり、この中心のまわりに諸々のいとなみが組織される。
・学校は、自らを生活と関連させ、子供が指導された生活を通じて学ぶ、子供の住みかになる機会をもつものとなる。
・学校は小型のコミュニティ、胚芽的社会になる機会をもつ。
・学校が小さな社会。
・社会が変わったことで学校も変わらなければならない。
ルソー
令和4年後期、令和3年前期の教育原理、令和2年、平成30年の神奈川県の教育原理で出題されました。
・スイスで生まれフランスで活躍した思想家。
・子どもと大人の本質的な差異を認め、「子どもの発見者」と言われる。
・ジュネーブ共和国に生まれ、主にフランスで活躍した哲学者、政治学者、作曲家。
・主著は、「エミール」「社会契約論」「人間不平等起源論」等。
・教育を「自然の教育」「人間の教育」「事物の教育」の3種類に分けている。
・子どもは自ら学び成長する力がある。
・知識を教え込まない方が良い(消極教育)。
・美徳や心理を教えることではなく、心を不徳から、精神を誤謬(ごびゅう)から守る。
・男女で異なる教育を提唱。
・名言「万物を作る者の手を離れるとき、全ては良いものであるが、人間の手に移ると全てが悪くなる」、「自然に帰れ」等。
「エミール」
・子ども期の重要性を唱えた。
・人は生まれながらに「善」なる者であるとする性善説の立場をとった。
・子ども固有の時期がある。
・子どもは未成熟な大人であるとする当時の子ども観に一石を投じた。
・人間の本来の性は善であるが、伝統、歴史、社会、政治などにより悪くなっていくと主張した。
・大人とは異なる子ども固有の思考や行動の特徴に従った教育論を展開した。
・「エミール」は、「子どもの発見」の書と称された。
ロック
令和3年後期、平成30年後期、平成28年前期の教育原理、平成29年の神奈川県の教育原理で出題。
・経験論の代表者。
・経験が意識内容として観念を与えるとした。
・人間の精神は本来白紙のようなものである。
・知識を獲得させる教育は、白紙の子どもの精神に外からいろいろと刺激を与え、観念を構成していくことだとした。
・健全な身体、道徳、知識を持った紳士であるべき(紳士教育)。
・主著は、「人間知性論」「教育に関する若干の考察」等。
「人間知性論」
・人間の精神は本来白紙。
「教育に関する若干の考察」
・健全な身体に宿る健全な精神、これはこの世における幸福な状態というものを簡潔ではあるが十分に言い表している。
・敏感な幼少時代に与えられた僅かの、言い換えればほとんど感じられないくらいの印象が非常に重要で、また長続きする影響を与える。
・教育は子どもの人間性が自然に芽生えるのを見守り、保護していくことである。
フレーベル
令和3年前期、後期、平成30年後期の教育原理、令和2年、平成31年の神奈川県の教育原理で出題されています。
・ドイツの教育学者。
・世界で最初の幼稚園設立。
・ペスタロッチを訪問し、師事した。
・遊びの重要性を説き、子どもが使って遊ぶための「恩物」を考案した。
・「キンダーガーデン」を作った。
・生まれたばかりの子どもでもあらゆる能力を本来自分の内に持っているという思想。
・「自己活動」と「労作」の原理を中心とした教育理論。
・「あらゆる善の源泉は遊戯の中にあるとし、また遊戯から生じている」として、遊びの重要性を述べた。
・「子供は5歳までに、その一生涯のすべてを学び終えるものである」という名言がある。
「人間の教育」
・すべてのものに神から授かった「神性(神と自然と人間を貫く神的統一の理念)」があり、それが人間の本質。
・全ての子どもは「膳」。
・幼児にとって最も大切なのは遊び。
・子どもの全ての活動は「神的」なものの自己表現。
「母の歌と愛撫の歌」
・家庭教育を向上させるために母親のための教育書を著した。
・母の感情を歌った歌や遊びの歌などが掲載されている。
ブルーナー
令和2年後期、平成30年前期、生成29年前期、令和2年神奈川県の教育原理で出題されています。
・アメリカの心理学者で認知心理学の分野の第一人者。
・子どもの言語習得に関する研究を行い、言語と文化に同時に参入する手段としてのフォーマットの役割に注目した。
・「発見学習」の生みの親(学問の本質となる「構造」を生徒に「発見」させ,その過程を生徒自身が考える)。
・「発見学習」は、「疑問」→既知の知識に基づいて「仮説」→「分析」→「検証」の過程を辿る。
・学問中心カリキュラムを提唱。
・「共同注意」を発見。
「教育の過程」
・「どの教科でも知的性格をそのままに保って、発達のどの段階のどの子どもにも効果的に教えることができる」
・ブルーナーが議長を務めたウッズホール会議の報告書として出版された。
・「教育の過程」では螺旋型カリキュラムが提案された。
ブルーム
平成29年前期の教育原理で出題されました。
・形成的評価は学習過程における学習の達成状況を評価するものである。
・学習活動において、即時的な評価活動、たとえば発言・挙手などで学習者の理解度を把握することも形成的評価である。
・完全習得学習
→診断的評価(指導前の学力)、形成的評価(指導中の軌道修正)、総括的評価(指導後の理解度)という3つの評価を適切に行うこと。
コメニウス
令和3年後期、平成31年前期の教育原理で出題されました。
・全ての人に全てのことを教えるという構想を唱えた。
・「汎知」を確立し、単線型の統一学校の構想を示した。
・「直観教授」(事物や事象を観察させ、知識を有効に学習させる教授法)を提唱。
・「直観教授」は、ルソーやペスタロッチに受け継がれた。
・あらゆる人が学べる学校として統一学校構想が述べられ、6歳くらいまでの乳幼児を対象とする学校は「母親学校」として構想された。
「世界図絵」
・子どものラテン語教育のための挿絵付きの本。
・世界最初の絵入りの教科書(図鑑)。
「大教授学」
・「あらゆる人に、あらゆる事柄を教授する普遍的な技法を提示する」。
・「教育なくしては、人間は人間になることはできない」。