2021(令和3)年前期の実技試験を一発合格した立場で、2022(令和4)年前期の実技試験のお題を描いてみました。
2022年(令和4年)前期 実技試験の造形のお題
問題
【事例】を読み、次の4つの条件すべてを満たして、解答用紙の枠内にその情景を描きなさい。
【事例】
M保育所の3歳児クラスの子どもたちが、保育士と一緒に園庭でフィンガーペインティングをしています。机に広げられた紙の上で、絵の具の感触を確かめたり、大きく腕を動かしたりして、楽しく描いています。
条件
1.フィンガーペインティングで楽しく遊んでいる様子を描くこと。
2.園庭での準備の様子がわかるように表現すること。
3.子ども3名以上、保育士1名以上を描くこと。
4.枠内全体を色鉛筆で着採すること。
引用元:令和4年保育士試験[前期]実技試験(知人より提供されたもの)より
お題を初見した感想
個人的なお題予想で、過去にボディペインティングのお題についてご紹介したことがありました。
同じように絵の具を用いた課題であり、お題のテーマとしては似ているのですが、ボディペインティングのお題で練習した内容が今回のフィンガーペインティングのお題で生かせたかと言うと、正直特に生かせる部分はあまりありませんでした。
結局は細かい「事例」や「条件」が課されると、全く別の構図に成り得るからです。
今回のお題の場合は、どちらかと言うと、前回の「色水遊び」のお題の構図の方が生かせる部分が多かったように感じます。
そういう意味では、以下の記事も参考にされることをお勧めします。
さて、今回のお題を初見した感想ですが、準備と遊びの両方がお題の条件に盛り込まれていると言う点においては今までにない出題の仕方だと感じました。
だからと言って、お題として難しい内容だったかと考えると、そうではないと個人的に感じます。
過去にお題の「条件」だけでなく、「事例」も意識した絵を描くことが高得点に繋がるのではと言う内容をお伝えしましたが、「事例」の内容も絵に盛り込むとすると、もう必然的に登場人物一人一人の作業と構図は決まってくるためです。
ところで、フィンガーペインティングとはどのような遊びかご存知でしょうか?
フィンガーペインティングとはその名の通り、手や指を使って様々な色の絵の具の感触を楽しんだり、課題を決めて紙に表現したりすることをねらいとした遊びということは想像できると思います。
ここで気を付けたいのが「フィンガー」なので、筆などは使用せず、指や手で直接絵の具に触れ、表現するという点です。
2021年(令和3年)後期実技試験 造形の作品
それでは、2022年(令和4年)前期の造形試験のお題に基づいて、私が描いた作品をご紹介します。
保育園児がフィンガーペインティングをしています。園庭の机の上には大きな紙が広げられ、枠内右の男の子の園児は、指に5色の絵の具を漬け、大きく腕を動かし虹のような模様を描いています。
真ん中の女の子の園児は、トレーの中の絵の具を両手に漬けて持ち上げ、絵の具の感触を確かめています。保育士はその女の子の腕を持ち、後ろから補助しています。枠内左の男の子の園児は、紙コップに絵の具を入れ、フィンガーペインティングの準備をしています。枠内奥には、水道でペットボトルに水を汲む女の子の園児がいます。
自己評価
今回も、令和3年の前期試験の反省点を踏まえて「条件」だけでなく、「事例」を意識した作品を仕上げました。
では、まず「事例」の内容を一つ一つ拾っていきます。
「3歳児クラスの子どもたちが」
今回は、3歳児クラスの園児です。3歳児クラスと言うと、満3歳になったばかりの園児から5歳弱までの年齢の園児がいますが、下記参考記事に記述の通り、園児の身長は各クラスでの平均身長より算出しています。
今回は机を描くことを事例で指定されており、水を汲む園児以外は下半身が机で隠れているため、保育士に対する3歳児クラスの園児の頭の高さ(身長)が正しく描かれていれば問題ありません。
保育士に対する園児の頭の高さ(身長)については、およそ保育士の胸の下辺りになるので、特に問題なく描けているかと思います。後方にも遠近法で縮尺を小さくした園児を描いていますが、頭身なども概ね問題なく描けていると思います。
「 保育士と一緒に園庭でフィンガーペインティングをしています」
今回、「条件」に記載されている通り、フィンガーペインティングをして「楽しく遊んでいる」人物と「準備」をしている人物を描かなければなりませんが、保育士をどちらに分類すべきか少し迷うのではないでしょうか。
「保育士と一緒に園庭でフィンガーペインティングをしています」という表現なので、保育士は「準備」をするより、園児と一緒に「楽しく遊んでいる」に分類しました。
しかしながら、「準備」をしている園児がいる一方で保育士が園児と同じように手に絵の具を手に漬けて「楽しく遊んでいる」様子を描くのは少し違和感があります。
そこで、絵の具の感触を確かめている園児の腕を後ろから持つことで、保育士は園児と「一緒にフィンガーペインティングをしている」ような構図としました。
他に考えられる構図として、保育士が園児の手の平に絵の具を出してるような構図でも良いかもしれません。
「机に広げられた紙の上で」
机の上に紙を配置しています。
真っ白の紙だと塗り残しと判断されてしまう可能性があるため、灰色で薄く塗りました。
「絵の具の感触を確かめたり」
真ん中の女の子の園児がこの作業を担当しています。
トレーの中に溶かされた様々な色の絵の具を両手に取り、絵の具の感触を確かめています。
しかし、絵の具というより、スライムのよう見えてしまったのは反省点です。以前、「ボディーペインティング」のお題で描いた絵の方が絵の具らしくダイナミックに描けたかもしれません。
「大きく腕を動かしたりして、楽しく描いています。」
ジャンプや走っているような動きだと、静止画でありながらそれぞれにしかない身体のポーズを描くことができるため動いているように見えます。しかし、「腕を動かす」という動きは普通に描くと、上下左右方向に腕を向けているだけのような絵になり兼ねません。
そこで、腕に動きを持たせる方法として、指に漬けた絵の具の軌跡を紙に描くことで表現しました。
ところが、これだけでは腕の動きが伝わりにくかったため、実際に目には見えない動きになりますが、腕の動きの軌跡を黒でサッと線を引くことで表現しました。
1.フィンガーペインティングで楽しく遊んでいる様子を描くこと
続いて、お題の「条件」です。
お題の「事例」で、「絵の具の感触を確かめる」園児や、「大きく腕を動かす」園児を描くことで「フィンガーペインティングで楽しく遊んでいる様子」については表現できたと思います。
2.園庭での準備の様子がわかるように表現すること。
フィンガーペインティングの準備物として、水や絵の具を使用することは容易に想像できると思います。
今回、絵の具を容器に入れている園児に加え、園庭らしさを表現するために水道でペットボトルに水を汲んでいる園児を描きました。
このような構図でいくと、令和3年後期の「色水遊び」での構図が応用できたかもしれません。
フィンガーペインティングのアレンジした遊び方として、絵の具や水に加え、小麦粉や片栗粉を鍋で混ぜて作る方法もあるようです。
3.子ども3名以上、保育士1名以上を描くこと。
今回、子どもを4名描きました。
園児を3名ではなく4名にした理由として、「絵の具の感触を確かめる」園児と「大きく腕を動かす」園児については分けて描きたかったのと、「準備の様子」がお題の「条件」に指定されていたため、「準備」に必須な絵の具と水について分担してそれぞれの作業を行っている園児を描きたかったためです。
練習では、3名の園児と保育士を描くだけで時間はギリギリだったのですが、園児の下半身が机に隠れることや服装を全員同じお遊戯服にできることなどから4人の園児を描く時間を確保できると判断しました。
4.枠内全体を色鉛筆で着採すること。
塗り残しもなく、時間内に終わりました。
絵を描く際に気を付けること10ヶ条
上記の自己評価より、「条件」だけでなく「事例」も抑えた絵を描けたのではないかと思います。
では以前ご紹介した、絵を描く際に気を付けること10ヶ条での視点ではどうだったでしょうか。
上記の反省点を元に〇✖△で評価してみました。
年齢に応じた身体の大きさを描く
「事例」でご紹介したように、概ね3歳児クラスの身長や頭身については描けていると思います。
様々な体の動きを描く
「事例」や「条件」の内容をそのまま取り入れようと思うと、必然的に様々な身体の動きは描けるかと思います。
保育士の目線は園児の方へ
保育士は園児の方を向いています。
これだけ「事例」や「条件」が事細かに指定されると全ての園児を見渡すような構図にするのは難しいので、作業している園児達の後ろに配置できていれば良いでしょう。
様々なアイテムを描けるようにする
今回、最低限描かなければいけないアイテムは、絵の具です。
今回の反省点として、上記でもお伝えしましたが絵の具が絵の具らしく描けなかった点です。細かく「事例」や「条件」が指定されたことでダイナミックな絵の具の表現がし難かったことも理由の一つですが、トレー内の絵の具を手に取る園児は、スライムを触っているような絵になってしまいました。
しかしながら、令和3年前期の「砂遊び」の反省点を生かし、水道から水を汲む園児を短時間で仕上げることができたのは、「準備」として加点になったかもしれません。
また、園庭なので園児や保育士に帽子を被らせたり、園児にお遊戯用のスモックを着せたりすることで、園外活動らしさは描けたかと思います。
園庭の様子については、今回はタイヤの遊具や水道、垣根などで表現しましたが、鉄棒やブランコなどの様々なアイテムがあるため、園庭との指定があれば背景をすぐ描けるように自分の中で背景を決めておいても良いかもしれません。
園庭の机については、令和3年後期の「色水遊び」のお題でも描く機会があったと思います。立体的に描くことで机らしさは伝わるため、余裕のある人はそうする方が良いでしょう。
構図は人物の重なりを少なく
4人の園児を上手く配置できているかと思います。
保育士については園児を後ろから補助する役目であるため、今回の重なりは問題ないでしょう。
年齢に応じた動作を取り入れる
3歳児クラスなので協同遊びが可能な年齢にもなるのですが、「条件」に「楽しく遊んでいる様子」と「準備している様子」の両方が描かれているため、どちらを優先させるか考えた際、「条件」を優先する形で絵を描きました。
表情は生き生きと
明るい表情で描けたかと思います。
遠近法に気を付ける
今回、後方に水を汲む園児を描くことで遠近法を取り入れました。
園児の大きさや頭身については概ね違和感なく描けているでしょう。
色塗りにバリエーションがあるか
色塗りについてはカラフルに様々な色で着色できました。
塗り残しが無いか
塗り残しはありません。
上記の自己評価を単純に〇✖で纏めると、下のピンク枠のようになります。
絵を描く際に気を付けること10ヶ条
年齢に応じた身体の大きさを描く 〇
様々な身体の動きを描く 〇
保育士の目線は園児の方へ 〇
様々なアイテムを描けるようにする 〇
構図は人物の重なりを少なく 〇
年齢に応じた動作を取り入れる △
表情は生き生きと 〇
遠近法に気を付ける 〇
色塗りにバリエーションがあるか 〇
塗り残しが無いか 〇
以上より、これも予想に過ぎませんが、合格を狙える絵は描けたのではないかと感じています。
近年の出題傾向について
近年の出題傾向について思うことがあります。
これも傾向に過ぎませんが、遊びに関する課題が多いことです。
そういう意味では、保育の現場での様々な遊びの方法やねらいについて理解しておく必要があると感じました。
まとめ
❍ 同じようなお題を練習していても必ずしも本番で生かせる訳ではなく、むしろ全く違う課題での構図が生かせる場合もある。
❍「条件」だけでなく「事例」を意識した絵を描くことが高得点に繋がるのではないかと感じる。
❍ 近年、遊びに関する課題が多いため、保育の現場での様々な遊びの方法やねらいについて理解しておく必要があると感じる。
※他の作品もアップロードしていますので以下ご参照下さい。
※近年出題されたお題についても掲載中です。
※言語対策についても掲載中です。
※科目別の勉強方法については、メニューボタン、またはサイドバーボタンよりご選択下さい。